消えたブルカニロ博士
宮沢賢治の作品は未完の物語が数多くあります。
あの有名な銀河鉄道の夜も例外ではありません。賢治の死後、草稿の形で遺された『銀河鉄道の夜』は欠落部分を持つ未定稿であり、しかも本文が全集が出版される毎に変わるという不安定な状態が長く続いていました。銀河鉄道の夜に旧版と新版があるのはそのためです。
旧版の銀河鉄道には物語のカギを握る“ブルカニロ博士”という人物が存在します。新版には全く登場しない人物ですが、旧版にはとても重要な人物として描かれています。
「やさしいセロのような声」をした博士はジョバンニにものの見方や考え方などを指し示す役割をしていました。
初稿から第3次稿まで登場しましたが、第4次稿では全てのシーンがカットされることとなります。賢治が年数をかけなんども書き直していた作品のため遺族と研究者が解読して、賢治の書いた文章をできるだけ生かそうと賢治が推敲の過程で削除したブルカニロ博士の挿話をあえて本文に載せたものが旧版の銀河鉄道の夜となるのでしょう。
博士は最後に手帳に物語を残したと言っています。まるで手帳に詩や童話を記す賢治のスタイルそのもの。博士に賢治の姿を重ねてつい読んでしまいます。賢治もまた「やさしいセロのような声」をしていたのでしょうか。
現在流通しているのは新版の銀河鉄道の夜です。ブルカニロ博士の登場する旧版銀河鉄道の夜も併せて読みたいものですね。
「ありがたう。私は大へんいゝ実験をした。私はこんなしづかな場所で遠くから私の考を人に伝へる実験をしたいとさっき考へゐた。お前の云った語はみんな私の手帳にとってある。さあ帰っておやすみ。」
旧版 銀河鉄道の夜 より
あの有名な銀河鉄道の夜も例外ではありません。賢治の死後、草稿の形で遺された『銀河鉄道の夜』は欠落部分を持つ未定稿であり、しかも本文が全集が出版される毎に変わるという不安定な状態が長く続いていました。銀河鉄道の夜に旧版と新版があるのはそのためです。
旧版の銀河鉄道には物語のカギを握る“ブルカニロ博士”という人物が存在します。新版には全く登場しない人物ですが、旧版にはとても重要な人物として描かれています。
「やさしいセロのような声」をした博士はジョバンニにものの見方や考え方などを指し示す役割をしていました。
初稿から第3次稿まで登場しましたが、第4次稿では全てのシーンがカットされることとなります。賢治が年数をかけなんども書き直していた作品のため遺族と研究者が解読して、賢治の書いた文章をできるだけ生かそうと賢治が推敲の過程で削除したブルカニロ博士の挿話をあえて本文に載せたものが旧版の銀河鉄道の夜となるのでしょう。
博士は最後に手帳に物語を残したと言っています。まるで手帳に詩や童話を記す賢治のスタイルそのもの。博士に賢治の姿を重ねてつい読んでしまいます。賢治もまた「やさしいセロのような声」をしていたのでしょうか。
現在流通しているのは新版の銀河鉄道の夜です。ブルカニロ博士の登場する旧版銀河鉄道の夜も併せて読みたいものですね。
「ありがたう。私は大へんいゝ実験をした。私はこんなしづかな場所で遠くから私の考を人に伝へる実験をしたいとさっき考へゐた。お前の云った語はみんな私の手帳にとってある。さあ帰っておやすみ。」
旧版 銀河鉄道の夜 より
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