恋物語

青空文庫(あおぞらぶんこ)は、著作権が消滅した作品や著者が許諾した作品のテキストを公開しているインターネット上の電子図書館である。その中に宮沢賢治の著書が数多く存在しているので少しご紹介したい。

 軽便鉄道の東からの一番列車が少しあわてたように、こう歌いながらやって来てとまりました。機関車の下からは、力のない湯げが逃げ出して行き、ほそ長いおかしな形の煙突からは青いけむりが、ほんの少うし立ちました。

上記文はシグナルとレグナレスという宮沢賢治の物語である。

本線の信号機シグナルと、軽便鉄道の小さな腕木式信号機シグナレスの、淡く切ない恋物語。賢治独特の暖かいユーモアに満ち溢れた作品である。シグナルは東北本線の信号機が擬人化された男性のキャラクターで、シグナレスは釜石線(当時は岩手軽便鉄道)の信号機が擬人化された女性のキャラクターである。賢治が居住していた岩手県花巻市の花巻駅にはこのふたつの路線が乗り入れており、そこから着想を得た、と言われている。

また、信号機たちが「蒸気機関車の父」と呼ばれるジョウジ・スチブンソンの名前を挙げて、願いをかなえられるよう祈りを捧げる描写がある。

なんと、宮沢賢治の物語にレンライなるものが存在しようとは…とびっくりした。
どうしたんだ賢治。

しかし
五日の月が、西の山脈の上の黒い横雲から、もう一ぺん顔を出して、山に沈む前のほんのしばらくを、鈍い鉛のような光で、そこらをいっぱいにしました。冬がれの木や、つみ重ねられた黒い枕木はもちろんのこと、電信柱までみんな眠ってしまいました。遠くの遠くの風の音か水の音がごうと鳴るだけです。

こんな文面を見るとあぁ、やっぱり彼の作品だなぁとホッとするのである。

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